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起立性調節障害発症から6年 ODっ子体験談~①出席率100%の専門学生に

2023/04/01

  • 体験談

今から約6年前、中学1年生の娘は起立性調節障害(OD)を発症し、ほとんど登校できなくなりました。朝起きて学校に行けないどころか、1日のほとんどを眠って過ごしたり、逆に夜何時間ベッドで目をつぶっていても眠れず、昼夜逆転が治らなかったり。

そのODっ娘は現在、専門学校の1年生を終えたところです。入学前まではほぼ在宅で、本人も認めるところの「ニート」生活でした。忙しい専門学校生活についていけるのかが心配でしたが、今のところなんとか休まず通えているのが奇跡のようです。

まゆごもりから目覚めたODっ娘

以前、保護者対象のスクールカウンセラーに言われました。「娘さんは今、まゆごもりをしているんですよ」。

やっとまゆの中から出てきた幼虫が今、自分で決めた道をぼちぼち歩き始めています。

毎朝ドタバタで遅刻ギリギリですし、就職など先のことはまだ全く想像もつきません。

子どものまゆごもり中、親は将来のことがいちばん心配です。高校は? 大学? 専門学校? 勉強も学校生活もできないままで大人になって、ちゃんと生きていける? 

少し前の私と同じように今、暗いトンネルの中で、悩み真っ最中のご家族がおられることと思います。まだOD継続中の我が家の経験談が、少しだけでも参考になればいいかなと思い、記事を書くことにしました。

好きなことを職業にしないほうがいい?!

最近はインターネット上などで「好きなことを職業にすると、行き詰った時に嫌いになって逃げ場がなくなるので、2番目に好きなことを仕事にするのがよい」といった内容を目にするようになりました。

起立性調節障害で通常の学校生活を送れなかった人とその保護者にとって、職業の選択は、今度こそは順調に行くようにと願う重要ポイントです。私が患者家族の会で会ったある親御さんも、「今心の支えになっている大好きなことを失わせたくないから、子どもには2番目に好きなことを仕事にしなさいと勧めている」と言っていました。

さて我が家も、将来の職業について母娘で話したりしましたが、彼女を見ていると結論は明解。行きたいお出かけの為には起きられるが(寝られなかったら徹夜明けでも出かける)、気が進まない用事の時には起きられない。自律神経恐るべし。少なくとも今の娘は、大好きなことじゃないとそもそも体が言うことをきかないという事実がすべてでした。

「 ニート中」に出会ったメイクは魔法

娘の起立性調節障害発症の原因で、ストレスになったことのひとつが、顔のコンプレックスでした。小学校の時に、クラスの男の子によくからかわれていたようです。

そんな彼女が出会ったのがメイクでした。顔のコンプレックスを解消してくれる魔法の道具。最近は中学生にも手が届く価格の「プチプラ」メイク用品が豊富なので、お小遣いを貯めて買ったり、インターネットのオークションで売買したりしています。

インスタグラムやYouTubeで、商品比較やメイクアップの仕方などの情報もむさぼっていました。学校の勉強をする脳は働かないけれど、メイクのことなら心も身体も動くんですね。

親として、高校受験・進学のことが気にならなかったといえば噓になります。でも1日20時間も真っ青な顔をしてこんこんと眠り続けていた頃のことを思い出すと、起きて笑顔を見せてくれているだけでよくて、本人がやりたいようにさせていました。

「運動」も「社会活動」もメイクでGO!

起立性調節障害の治療で医師から指導されることとして、特に足の筋力をつけて血液をポンプアップするための「運動」と、学校へ行っていない場合は「社会活動」をしなさいというのがありました。

社会活動というのは、家の外に出て社会に触れる、というような行動です。

我が家の場合は、メイク用品のテスターを試しにドラッグストアに歩いて行ったり、ネットオークションで売れた商品を発送しにコンビニに行ったりするのを「運動」としていました。たいていは体が動きやすくなる夕方から夜、時には深夜の外出でしたが、散歩は嫌がるし、やらないよりはいいと思って行かせました。

微妙な色の違いを店外の照明下で見るなどしてから買う

また、中学校では子どもだけで学区外に行ってはいけないことになっていましたが、我が家では「親の責任で行かせます」と公言して、市街地にも1人で行かせました。電車に乗って都会にコスメグッズを見にいくことも「社会活動」だと思ったからです。実際、道に迷ったら駅員さんや道行く人に尋ねていましたし、通勤・通学のラッシュにもまれたり、キャッチセールスをかわしたりなど、刺激を受けて帰ってきていました。

市街地で「社会活動」

6年ぶりの学校生活~走り出したら止まらない

娘は通信制高校に進み、3年生になるとメイク関係の専門学校のオープンキャンパスに何校も参加するなど、進学先を積極的に探しました。そして、メイクの現場では美容師免許も持っておいた方が有利だと知り、3年制のヘアメイクアーティストのコースに決めました。

超ハードな毎日でも出席率100%

 

実際始まってみると専門学校という所は、本当に忙しくてハードなんだなという印象です。普段の授業やその準備もそうですが、1年生からインターンシップにも参加します。先輩学年のメイクの顔モデルも頼まれるなどして、土日も出かけることがしばしばあります。

朝はいつも遅刻ギリギリですが、今のところ欠席はしていません。また、高校時代からのアルバイトも続けていますし、遊びにも全力投球です。どこにそんなエネルギーが?と思うほどです。

走り出したら止まらないODっ子

学校はハードだし、朝からの社会生活は休みなしでストレス満載。体内時計はまだ完全には治っていないようで、疲れていても夜は寝付きにくく、朝起きるのにも苦しんでいます。でも私が声をかけなくても毎朝、何とか出かけています。

親としては、そばで見ていて倒れやしないかとヒヤヒヤします。患者家族の会の集まりで先輩ママさんに相談すると、「止められないよ」「やらせるしかない」と笑われました。他にも進学で1人暮らしを始め、爆発的に活動している息子さんに当惑しているお母さんがいました。今までじっとしていた子たちは、内に溜めていたエネルギーをここぞとばかりに投入しているんだと思います。

ただ、うちの娘は「敏感すぎ」「正義感強すぎ」な性格なのが心配なところです。社会・学校・友人関係などで納得できないことがよくあるようで、いつかストレスに押しつぶされるのではないかと、ハラハラもしています。

親はただ支えて見守るしかない

私は、「娘の自立まであと2年」などとカウントダウンしないようにしています。在学中に「メイクでも自分のやりたい形と違う」と言い出すかもしれないし、たとえ卒業して就職しても、ストレスなどで病気が再発したりするかもしれないからです。それに親としても、ゴールを設定すると、到達しないでがっかりすることもありますから、それを避けたい気持ちもあります。

起立性調節障害に罹る子は「まじめ」な子が多く、自分に厳しくて融通の効かないところがあります。でもだからこそ、どうすれば生きていけるかを、どの子も真剣に考えていると思います。そしてまわりの期待に応えなければという気持ちも強いです。

元気な子どもの場合も同じですが、親にできるのは、子どもが決めたことを否定せず、もし進路変更したくなったらそれも受け入れてやること。本人が納得して生きていけるようにゆったり構えて(いるフリをして)、見守り、話を聴き、応援することなんだろうなと思う毎日です。

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