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髪がなくても普通な世の中に…ヘアドネ普及者の想い

2021/03/12

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ひと昔前まで女性が長い髪をバッサリ切ることは、イコール「失恋した?」と質問が投げかけられるなど、ネガティブな空気感がありました。

しかし最近では、「ヘアドネーション(髪の寄付)をした」という前向きなイメージが広がってきています。

2009年、日本で最初に誕生したヘアドネーションのNPO団体は、美容師の渡辺貴一さんが、大阪で自分のサロンを開業するにあたり「髪を生業としてる自分たちだからこそできる社会貢献活動をしたい」と始められました。

JHD&C(ジャーダック) Japan Hair Donation & Charity

ドネーションする小6、中1の女の子: 年齢に関係なくできる社会貢献

人毛ウィッグ第1号を完成するまでには2年以上かかりましたが、ヘアドネーションが広く知られるようになり活動が軌道に乗り始めた今、より多くの子ども達にウィッグがプレゼントされることが可能になってきています。

病気や、病気の治療で頭髪を失った子ども達が、人の髪で作った自然なウィッグをつけることで元気づけられるのは何よりですが、渡辺さんの理想とする世界はもっともっと先にありました。

「必ずしもウィッグが必要のない世の中が来ること。」

ウィッグをつけていようがいまいが、ありのままの姿を受け入れてくれる家族・友人・社会であってほしいという、とても大きな理想です。

髪がつなぐ物語」という本の中に登場する1人の少女とその友達が、大人にそのやさしい世界を教えてくれています。

最近増えている子どもの円形脱毛症

愛夕(あゆ)ちゃんという女の子は、小学校1年生の時に突然髪が抜け始めました。

あちこちの病院をまわりましたが、医師は、原因がわからない円形脱毛症が最近増えていて、10人中7人は治って髪が生えてくるけれど、残りの3人は生えてこないと言いました。

抜け始めて3カ月で、愛夕ちゃんの頭にはほとんど髪が残っていませんでした。

縫物の得意なおばさんが、黒い帽子を作ってくれて、登校など外出時にはそれをかぶりました。脱げない工夫もしています。

成長に合わせて作り直してもらったので、小学校を卒業するまでにかぶった帽子は、32個になったそうです。

黒い帽子は、愛夕ちゃんのトレードマークでした。

帽子をかぶっていても頭に髪の毛がないことはすぐにわかりましたから、小学校では、事情を知らない子ども達にからわれてイヤな思いもたくさんしました。
また家族で出かけた温泉では、帽子を脱ぐように注意されるようなこともありました。

でも、学校では理解してもらえるようにお母さんたちが働きかけ、何より愛夕ちゃんの強い思いがあって、ウィッグはかぶらないで過ごすことができたのです。

ウィッグは、愛夕ちゃんにとって、チクチクしてあまりかぶり心地のいいものではなかったそうです。

お年頃になり、ウィッグを手に入れる

それでもやはり愛夕ちゃんは、成長に伴ってウィッグを欲しいなと思うようになりました。

そして、冒頭のNPO法人 JHD&C(ジャーダック)に提供の希望を出し、6年生の夏にはウィッグを手にすることができました。

人前に出ることも恥ずかしくなくなり、服装などおしゃれの幅も広がりました。

街に出かけても人の視線が気にならなくなり、お母さんも緊張から解き放たれました。

それからしばらくたったある日、愛夕ちゃんは放課後に友達とふたりで、鉄棒をしに公園に行きました。

ウィッグだと脱げやすいので、いつもの黒い帽子をかぶっていきました。

ところが、愛夕ちゃんが鉄棒で前回りをしたとたん、帽子がぽっとんと脱げてしまいました。

愛夕ちゃんがハッと驚いた瞬間、隣にいた友達はころころと笑い出しました。
それはとても温かい笑い声でした。

そして愛夕ちゃんが黒い帽子を拾ってかぶると、ふたりは何ごともなかったように鉄棒を続けたのでした。

髪の毛があってもなくても、愛夕ちゃんは愛夕ちゃん。

ありのままの愛夕ちゃんを受け入れてくれる大切な友達がいることで、愛夕ちゃんは笑顔でいられたのです。

男性でも女性でも、頭髪があってもなくても。

成人男性で髪の悩みを抱える人も少なくありません。

薄毛や無毛は、その人が何か悪いことをした訳でもなく、遺伝的要素、ストレス、あるいは病気・その治療の影響などの場合もあります。

なのに日本では、頭髪が少ない、特に男性が毛嫌いされてしまう傾向があります。

どうしてそこまで悩みになってしまうのか。

西洋では、頭髪が薄く体毛が濃いのは男性ホルモンが強いからで、そこに魅力を感じる女性も多いと言います。スキンヘッドの人気俳優も少なくありません。

その影響もあってか最近では日本でも、思い切って全部剃ってしまう人も増え、違和感も以前に比べると小さくなっている感じがします。

女性でもファッションとして剃ってしまう人も見かけられます。

ただ、そこまでふっきれる人ばかりではありませんし、髪の毛がないことへの偏見もまだまだあります。

特に成長過程にある子ども達とその家族の心は繊細で、やはりウィッグの力が必要なこともあります。

人毛ウィッグを作る為の髪を集めるヘアドネーションは、年齢や性別に関係なく子どもでもできるボランティアで、アメリカではずいぶん前から当たり前の社会貢献です。

ウィッグが必要ない社会を理想としつつ、渡辺さんたち JHD&C(ジャーダック)の日本での活動は、まだまだ続きます。

本の最後にはヘアドネーションの方法や、カラーやパーマ、毛髪の状態などを記す書式も掲載されています。

著者印税は、NPO法人「JHD&C」に全額寄付されるとのことです。

なお、最近では、インターネット上でヘアドネーション用に髪をカットしてくれる賛同店を検索することも可能です。

ホットペッパービューティなどの検索ボタン横の「探す」ワードに、「ヘアドネーション」「〇〇市」と入力すると、行きたい地域の賛同店が表示されます。

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