自律神経系の病、起立性調節障害(OD)と診断されるお子さんが増え、メディアで取り上げられることも増えています。
世間に注目されること自体は、周知が進んで学校や関係者の理解も得やすくなるので喜ばしいのですが、困ったことにそこに便乗する商法が現れています。
起立性調節障害(OD)は必ず治る病気と云われていますが、残念ながら、すぐに治るものではありません。
また特効薬も、劇的に回復させるような治療法もありません。
どのくらいの期間で治るかには個人差がありますが、長い時間がかかる場合が多く、症状はよくなったり悪くなったりを繰り返し、支える家族の気持ちもそれによって左右され、苦悩の日々が続きます。
そこに付け入るようにインターネット上では、各種サプリメントや栄養ドリンク、整体・整骨などの代替療法が、さも起立性調節障害(OD)に効果があると宣伝するウェブサイトが急増しています。
日本小児心身医学会では、これらの有効性に科学的根拠(エビデンス)がないとして、喚起の声明を出しています。
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD) について 最新情報
キーワードを拾って現れるサイトの仕組み
OMUSUBIスタッフ宅でも、子どもが夜寝られなくて朝も昼も起きられず、登校が不可能な状況になり、それがただの夜更かしや怠けではなく病気を疑い出した時、インターネットで何か手がかりがないかと毎日検索し続けました。
専門病院で起立性調節障害と診断された後も、以前よりは少し改善しつつある現在でも、何か子どもの生活の助けになる情報はないか、進路・将来はどうしたらよいかと、日々思いついてはネット検索をしています。
そんな時、「起きられない」「眠れない」「頭痛」「ふらつく」「倦怠感」「失神」「不登校」そして「起立性調節障害」などのキーワードを拾って現れてくるのが、一見、専門家が発信しているのかと見まがうように医学的知識を引用したサイト。
しかし読み進めていくと、このままだと重症化して取り返しがつかなくなる、というような脅しの表現、そして販売サイトにつながるボタンがある、というような便乗サイトです。
インターネット検索は、閲覧の実績がなくても有料の仕組みを利用することで検索結果の上位に上げることもできるので、心に余裕のない人々の目に飛び込む仕掛けでついつい読ませ、それらしき内容で誘導して購買ボタンをクリックをさせます。
起立性調節障害(OD)の治療は、疾病への理解・日常生活上の工夫・学校との連携・環境調整そして即効性はないが薬物療法も併用するなど総合的に行われるもので、すぐに効く治療法や特効薬は現在のところないと言われています。
だからこそ、わらをもつかむ思いで少しでも回復の助けになる情報を欲している家族の心を突いた商法なのです。
情報をかしこく取捨選択
もちろんサプリメント(栄養補助食品)に健康的効果がないという意味ではありません。
例えば、これを飲むと気分や体調が少しよくなる、というものは日常生活の助けとなりますし、身体を整えるといつもより眠りやすい、というのも嬉しいですから、補助的に利用するのは良いかもしれません。
もし、気になる療法を見つけたときは、まずは直接主治医に尋ねるのが良いでしょう。
自動的に舞い込んできた情報や、法外な値段がつけられたものはまず疑ってかかるくらいの警戒心が必要です。
残念なことに、人の弱みにつけこむ商売は社会のあちらこちらに存在します。
これは起立性調節障害に限らず、あらゆる疾患に共通しています。
先の見えない闘病生活で不安も多い患者本人とその家族には、ストレスは大敵です。
悪意のある情報に振り回され、貴重なお金や時間を浪費して心労を重ねないよう、自分や家族にとって必要な情報をよく見極めて選びたいものです。
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