我が子が中学1年生で起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)を発症し、私は学校から配られたプリントで知ったスクールカウンセリングに、月1回かかっていました。
そのカウンセラーが言いました。「娘さんは今、まゆごもりをしているんですよ」。
まゆの中でODっ子は、自分の将来について真剣に考えています。脳血流が悪いので思考や集中力は低下していますが、ネットで情報を集めたり電話相談にかけてみたり。登校や勉強ができていない分、悩みは深刻です。
我が家のODっ娘は、進学先の高校に通信制を選びました。本人がどのように進路を決定したのか、うちのケースを1つの例としてお話しします。
時間に融通がきく通信制高校
小中学校は義務教育なので、出席が0日でも卒業できますが、高等学校は異なります。全日制高校では出席日数が足りないと留年したり退学になったりします。起立性調節障害が治っていない、あるいは入学後に発症した子にとって、高校生活は出席日数との闘いです。
そんな中、全国に増えている通信制高校が、起立性調節障害患者に有効な進路のひとつとなっています。課題を郵便やメールで提出して単位を取り、高卒の資格を得るシステムです。課題は体調のよい時間帯にこなすことができますし、望めば大学受験もできます。通信制高校の3年間は、病気を治しながらその後の進路を考える、猶予期間として有効だと言えるでしょう。
通信制高校ばかりの合同説明会に親だけ参加も
我が家のODっ娘は、発症して間もなく入院生活も経験しましたが、起立性調節障害の闘病生活は基本的にはずっと「在宅」です。「夜寝られなくて、朝起きられない」状態で、頭痛や腹痛などの体調不良と毎日闘うしかありません。
中学2年生のある日、娘はインターネット上で知り合った同じ趣味の友人から、当時新しくできて話題だった通信制高校に通っている話を聞き、「N校、いいかも」と言い出しました。私も通信制について調べ始めました。
通信制高校も、学校によって目指す進路や登校については制度がさまざまです。私は、患者家族の会で「YMCA」は昼からの授業を履修すれば通いやすいよと聞いてきては娘に話し、通信制高校の合同説明会で「ルネサンス」はネット教育に力を入れてると聞いてきては話すなど、娘にできるかぎり情報提供をしました。
今や全国に通信制高校は270校以上あり、通信という性格上進学先の選択肢になりうる学校は、地域を選ばなくてよいので相当な数にのぼります。各地域で、通信制高校だけを集めた合同説明会が、複数社の主催で開かれているほど一般的な存在になりつつあるのです。
みんなが行く全日制高校に「想い」あり
ODっ子「あるある」で、各学年の新学期や受験学年の2学期頃になると、起立性調節障害の子も意識が高まって自律神経が整い(高ぶり?)登校でき始めたりします。
娘も、中3の2学期にはぽろぽろ登校し始めました。授業が、科目によっては全くわからないので退屈だと言っていましたが、登校できるようになってくると、もしかしたら自分も全日制高校に通えるかもしれない、という気持ちが芽生えてきました。
担任に話すと、偏差値を知るために校内実力テストを受けるように言われました。
昔から読書が好きだったせいか国語力はありましたが、他はなかなか厳しい結果。それでも本人は「どこでもいいから」と、全日制への想いを持ち続けていて決め切れずにいました。
最終的に本人が決めるのが大事
中学校の担任や進路指導教諭も、いろいろな全日制高校の選択肢を挙げて、内申書を出すギリギリまで待ってくれました。私たち親も、本人がこの先後悔したり大人のせいにしたりしないように、自分で決断するのをただ待ちます。
でも、体調はまだ快復とはほど遠く、試験当日に起きられるか、そもそも入学できても出席日数ばかり気にする日々になってよいのか…。全日制に進学することでストレスが増し、病気が悪化する恐れもあります。最終的には本人が、通信制のN高等学校を受験すると決めました。
出願時に高校の窓口に「不合格になることはあるのですか」と尋ねると、「保護者の意向ではなく本人が行きたいという姿勢であれば大丈夫です」と言われました。入学試験は面接と、当日出た複数のテーマから選んで書く作文でした。面接はともかく文章力には自信のある彼女は、ちょっぴり笑顔で試験会場から出てきました。
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