以前OMUSUBIに掲載した経験談、精巣捻転で左の精巣を摘出した「息子と母の17年」。
お子さんご本人は病気や摘出の事実を覚えているのか、大学生となった今はどう感じているのかと思い、取材をお願いしました。
快く受けてくださったインタビューの当日、血液検査で男性ホルモン値が正常範囲内だったということが、お母さんの口から息子さんに初めて告げられました。
血液検査で男性ホルモン(テストステロン)正常値
以下、Q:質問者(OMUSUBIスタッフ)
母:お母さん 息子:ご本人
Q:体験談では「成長した息子がホルモン検査をするかどうかは、本人に任せる」とおっしゃっていましたが、検査をされたんですね。
母:先日、息子が体調不良で血液検査をすることになったので、医師にこっそり「男性ホルモン(テストステロン)も検査してください」と頼んだんです。
事情を話すと、体格も発毛も見た感じはちゃんと発達していると思うけれど心配ならば、と項目に入れてくれました。その結果が正常値だったんです。
数字で見て、すごく安心しました。
息子:検査をしているなんて知りませんでした。自分は気にしていなかったし。
でも、結果を知ってホッとしました。
母 : 残った1つの精巣が2つ分、2倍がんばってくれていたんですね。
3歳時の痛みも手術も、記憶にない
Q : お母さんの手記によると、相当な腹痛があったようですが、3歳の時の痛みや手術のことを覚えていますか。
息子:それが、全然覚えていないんです。手術室から出てきた風景がぼんやり記憶にあるような、ないような…
母:最初に痛がって小児科に連れて行ったら整腸剤を出されて、一夜明けてお腹を見たら、びっくりするくらい(赤ちゃんの頭くらい)腫れていたのにそれも覚えてないの?
息子:覚えてない。
傷跡と左右のアンバランス
Q : お母さんは、学校でいじめられたりしないかをすごく心配していたけど、実際はどうでしたか。
息子:小学校3年生くらいの頃は自分に少しコンプレックスがあったからかもしれませんが、スイミング教室に通っていた時に、ロッカールームで見られていないか気になったりはしました。
でも、6年生くらいになったら全然気にならなくなって、逆に笑いのネタにしたりしておもしろがっていました。
摘出手術をしたことを話すと友達も「マジか、1個しかないんかー」って笑って言っていました。
母:友人との関係性がよかったんだと思います。
手術の傷は鼠径(そけい)部に5センチくらい。
私は幼い頃からずっと見ているので、精巣を摘出した左と、右の陰嚢とのバランスも気になっていました。
いじめが起こってからでは遅いと思って、念のために担任に情報は入れておき、何かあったら対処してくださいとお願いしていたんですが、結局不要でしたね。
Q : 中学1年で、また痛みがあったんですよね。
息子:するどいチクチクするような痛みでしたが、母がものすごく焦って病院に駆け込んだので、痛みよりそれに驚きました。
母:「お腹が痛い」は、私にとって2度と聞きたくない言葉だったので反応してしまいましたが、診察してもらって何でもなくて安心しました。
それ以降、病院には行っていません。
思春期になって思ったこと
Q : 思春期に入って、身体へのコンプレックスはどうでしたか。
息子:過去に自分に起きてしまったことは仕方ない、これからは逆にいいこともあるかなーなんて考え始めていました。
高校時代に薬剤師になろうと決めましたが、ついでに同じ境遇の子がいたら「大丈夫だよ」とアドバイスをしてあげられるような仕事もできたらいいなと思っています。
母:私も知り合いの男性が、精巣が1つしかなくても結婚して子どもが生まれたという話を聞いていたので、その頃からは気にしなくなっていましたね。
生活には全く支障がありませんでしたし。
****************
子どもがケガをしたり病気になったりすると、あの時ああしておけばよかった、こうすべきだったと後悔し、子どもの将来に悪い影響を与えてしまったかもしれない、と母親は自分を責めるものですが、息子さんは母の身長を越え、精神的にも頼もしい青年になっていました。
「災い転じて…」ではないけれど、子どもは意外と自分の運命を受け入れて、強く育っていくものなのかなぁと感じたインタビューでした。
- Share
- Tweet